1. |
文明をこえた鳥
04:06
|
|
||
飛び方も知らぬまま
空に放たれた鳥は
自由すぎて孤独だった
誰も知らないあの日の風を運びながら
雲路を抜けて
夜明けを告げにやってくる
翼を授かったばかりに
鳥は今日も空を飛ぶ
ある昔、形なくなるその前に
鳥になる時間があると言われていた
鳥たちは今のこの時を掲げ
太陽に向かい目一杯に翼を広げる
それは今ここに在るあかし
大空を飛ぶあの一羽の鳥もまた
目一杯に翼を広げ飛んでいる
不死鳥だとは知る由もなく…
文明を超えた鳥が空に一羽
あの鳥に消え行く音をたくした夜明け
|
||||
2. |
風の化身
02:49
|
|
||
どこかの風
あちらへ ひゅるり
こちらへ ひゅるり
どこへ行くの?とたずねてみても
答えはいつも一辺倒
「吹かれるだけさ」
そういえばあの日の風も同じような事を言っていた。
気付くと風はもういない
そんな彼らが去った時
どんな形を与えるべきか
どんな風に残すべきかと
ある小説家は
とどまらない風の伝え方を考えた
ちっぽけな考え事だった
風に姿は与えられない
悩みに悩んで辿り着いた答えだった
遠回りの記憶のなかに風が走る
あの日のジレンマも笑い飛ばすかの様に
ひゅるりと走る
あんな風になりたい
つむじと共にひゅるりと吹かれ
少し上を飛んでいたい
ずっとふわっとしていたい
|
||||
3. |
シルエット
03:54
|
|
||
「雨の日なら なおさらよ。」
空想の渦は膨大だ。
想像力豊かな君は 黒の世界 も 白の世界 も
どちらにも行けてしまう…
どうしようか、この人生…
甘い言葉が輪郭を残し鳴り響く
粒立つピアノはお嫌いですか?
空へ飛ぶ出すような爽快感
はたまた
地中に根を張る安心感
どちらも捨てがたく、どちらも得難い
繰り返し降る雨は、不思議が同居していて
水たまりに影を落とす
|
||||
4. |
血となり肉となる攻防戦
04:27
|
|
||
「そろそろ潮時よ。」
構える二人と
二面を行き交うピンポンの行方
円を描く様に相手の出方を見ている
赤と黒の攻防戦
回転をかけて引き起こる
混沌の中の魂胆と
ラリーにうずまく積年の思い
あの世とこの世の垣根を払い
黄昏れながら血走る情熱
それはまさに つめたく あたたかく
敵か見方か、シロかクロかもわからぬままに
「さぁ、共におどりつづけましょう」
いっそこの体が消えてなくなるまで
たぎる鼓動は 人間臭く執念深く
人生謳歌といきましょう
「引き際だなんて言ってないわ。」
はじまりの潮時にスピンをかけろ
|
||||
5. |
不在の日々は音楽に変わる
04:20
|
|
||
かつての音は紙に記されやってきた
その手に触れる事も出来ないままに
空席のピアノにいつかのぬくもりを
そっとすくう
音の波紋に舟を浮かべ
バルカロール(舟唄)はページをめくる
湖に沈む、かつての音楽は
かすかに残る海の記憶もたどりながら
一隻の舟にたどりつく
そして水は枯れて
草原となった
湖に放した紙切れ一枚…
紙切れ二枚…
不在の日々は音楽に変わる
|
||||
6. |
木々は共に揺れている
01:15
|
|
||
1つ、また1つと果実がはじけてゆく
心のゆらめき
木々のゆらめき
誰だってゆらいでしまう風がある
私だけの涙は
実は誰もが味わう味なのだ
残された果実は順番に赤く実を染めて
結ばれた糸の様に木々と共に揺れている
限られた時間で成熟を迎えた赤い実は
朽ちていつかの種となる
そして実を宿し、また成熟を待つだろう
けれども、この実は鳥に捧げようと思う
|
||||
7. |
くぐりの森
02:58
|
|
||
とおくはなれて
名前も忘れた
この感覚誰との思い出だったっけ…
人は思い出をたどる時、
ある森をくぐりぬけるらしい
その名も くぐりの森
絡まる蔦は過去も未来も
全てを引き連れながら
広がっていた
|
||||
8. |
耳うちのフーガ
03:55
|
|
||
ある森の片隅に
降り積もった
つめたくも あたたかな時間たち
ここは沈没博物館
数多の"不成功"が水に浮かぶ
沈みゆく 長い沈黙
落下の時間
消えそうで、消えなかった欠片たち
ここにないのに、残る ゆびの痛み
どんどん遠く 沈んでゆく
そんな様子を眺めながら
鼓膜を打った "耳うちのフーガ"
逃げ惑いながらも
引き連れ、追いかけ、走り続ける
まるで、燃え続け、震えては散る
星屑のような音楽だった
遁走曲(フーガ)が導く、痛みの先へ
全ては混ざって、連なっていった
愛おしい時間(トキ)にも痛みはある
かなしみ と よろこび
おわりと はじまり
失くしては生まれて
埋めては、宿る
レクイエム に マーチを
「こわれたら、はじまり」
そんな日々がこの森の片隅に
朽ち行く欠片がもたらすもの
今、私たちに 森屑降りて
|
||||
9. |
雲路の果てに
03:31
|
|
||
雲がひらけて
路がうまれる
ここは鳥や月の通り路
見上げた雲から
見下ろす雲へ
幼い日のまなざしと
老人となった日のまなざし
同じだったら良いな
あのそらは とおく
つかめない く も
あのとりの ゆくさき
ゆめにみた そらへ
おおきく 描くんだ
チョークの ヒコーキ
かぜが さらってくさ
(と び た つ)
あ の そ ら へ
あのひみた そら
このときの 果てへ
このくもは あまく
(とりたちと とぶそら)
ユメのなかに きえた
(あの日のそらへ)
|
repair Japan
絵と音と言葉のユニット。「リペア」。「こわれたら、はじまり。」をテーマに、クラシカルで静かな音楽は開放感と閉塞感の両面を持ち、つめたくあたたかい。絵とトロンボーンが日下明、ピアノと言葉が谷口有佳。
trombone,illustration,art works by Akira Kusaka
piano,text,composed by Yuka Taniguchi
Streaming and Download help
If you like repair, you may also like:
Bandcamp Daily your guide to the world of Bandcamp